昨年までは毎年道場の古い門人の皆さんが集まって僕の誕生日祝いをして下さっていたのですが、新しい門人の皆さんも参加したいという流れが生まれたために参加希望者の人数が急に増えてしまいました。希望者全員が入ることができる店を見つけるのも難しいということで、今年の誕生日祝いは何度かに分けてそれぞれ少人数の有志の皆さんが集まって下さいました。
最初はご近所の皆さんということで、白金にある僕の部屋まで歩いて来られる方々がその中のお一人のお住まいに集まって僕を呼んで下さったのです。それではということで、僕は40年前にスイスを離れて日本に戻ってくるときに現地の友人が記念品として託してくれていたスイス製の「ラクレット電熱器」を持参して初めて使ってみることにしました。スイスのレストランで「ラクレット」というチーズ料理を頼むと、巨大なラクレット用のチーズの表面を業務用の電熱器か釜の火で溶かして皿の上の茹でたジャガイモの上にかけてくれます。それをスイスの家庭で楽しむために販売されていたのが家庭用の「ラクレット電熱器」でした。
外見からも想像がつくと思いますが、ごらんのように出し入れできる取っ手つき鉄板皿が円形に6枚あり、それぞれの鉄板の上にカットしたチーズを入れてから奥に差し込んでおきます。後はスイッチポンで、しばらく待つとちょうどよい具合に溶けたチーズの出来上がりです。
見た目はお正月のお餅を焼いた雰囲気ですが、少し焦げた表面を破ると中からは熱々トロトロのラクレットチーズが登場します!
40年以上を経て初めて使用したのですが、スイスの酪農の風景を表す模様が描かれた上蓋の内側に頑丈な電熱器が仕込まれただけの単純な構造だということと、世界に誇るスイス工業製品のかっちりとした作りと耐久性とが相まって見事に働いてくれました。いやー、さすがはメイドインスイス。そして、さらに驚いたことには、この頑丈な「ラクレット電熱器」を製造したのが世界的に有名なスイスの金属水筒メーカー「SIGG社」だったのです。SIGGのアウトドア用の水筒や弁当箱は有名ですが、このような電器製品も作っていたとは。
その次に開いていただいた誕生日祝いには主に古くからの門人達が20人ほど集まってくれましたが、このときからはバースデーケーキのオンパレードになりました。以下にそのバースデーケーキをお目にかけていこうと思います。
最初のものにはこれまた驚きましたが、何とホールケーキの表面に僕の顔が描かれているではありませんか!
近頃では生花の花びらの表面に文字や記号をプリントできるとは聞いていましたが、ついにホールケーキの表面にも絵をプリントできるようになっていたのですねー。ビックリ。
あまりに驚いた僕は、カットして皆さんの口に入る前にホールケーキの表面に描かれた僕と並んでツーショット(?)の写真を撮っておくことにしました!
如何ですか? やはり似てますね!
その次に開いていただいた誕生日祝いには矢作直樹先生も来て下さいましたが、だからというわけか銀座の一等地に構えるオーストリア王室御墨付きの名コックさんに腕をふるっていただきました。なので、お祝いはケーキではなくご覧のような一皿のデザートで、オーストリアの王家の紋章風にドイツ語で飾り付けられていました。いやー、これまた大感激。
そして、次にあった誕生日祝いからは一般的なバースデーケーキが用意されていて、蝋燭の明かりも年の数だけ揺らいでいました。「くにちゃん」というのは僕の子どもの頃からの愛称です・・・もうそんな年でもないのですが。
確かに子どもの頃からいちばん好きなケーキはイチゴのショートケーキなので、このときにもイチゴのショートケーキ風のホールケーキが登場してきたのですが、最後に開かれた誕生日祝いでは種がなくて皮も食べられる岡山特産シャインマスカットが散りばめられた生クリームたっぷりのホールケーキになりました!
これは「イエスの方舟」ならぬ「ヤスエの方舟」に集う皆さんからのお祝いで、イチゴショートよりも美味しいケーキでした! このときはバースデーケーキ以外にも誕生日祝いが用意されていて、包み紙を開いた僕はビックリ仰天。何故なら、本当にその頃に僕がいちばん欲しいと思っていたけれども値段が高かったので買っていなかったものが現れてしまったのですから!
しかも、その表面にはわざわざ僕の名前と似顔絵がこれまたプリントされていたのです!
では、これは何かというと、以前のミニメッセージでもご紹介しました僕の商売道具である『携帯文章入力装置「ポメラ」』の最新型なのです。僕がずっと愛用していたポメラの画面は白黒反射型液晶だったために目に優しいという特徴がありました。そのポメラが故障してしまったので買い換えようとしたところ、既に反射型液晶画面のモデルは生産中止となっていて、バックライト付の液晶画面の新しいモデルしか手に入らなくなっていました。しかしバックライト付の液晶画面は蛍光灯を見続けるのと同じで、すぐに眼が疲れてしまい仕事になりません。原稿を長時間打ち込むことができなくなるからです。
これでは商売あがったりということで、何とかネット販売で愛用していたモデルよりもさらに旧式の白黒反射型液晶画面のポメラの新古品を手に入れて急場をしのいではいたのですが、画面の小ささには参ってしまいます。そんな新古品とはいえ、目には優しい反射型白黒液晶画面なのですから、それまでもが故障したあかつきには本当に困ったことになってしまいます。そんなときに朗報がもたらされたのですが、やはり僕のようにバックライト付き液晶画面の明るさに目をやられるユーザーが多かったとみえて、キンドルなどに使われている電子ペーパーと呼ばれる反射型白黒画面を備えた最新型のポメラが発売されることになったのです。しかも大画面で機能も豊富になっているというではありませんか。
万々歳の僕はすぐに有楽町の量販店に直行したのですが、残念ながらすぐに買うにはいささか値段が張ったため、新古品のポメラが壊れて使えなくなるまでは小さな画面でも我慢して使っていこうと思い直したところでした。
それが、それがです。このときサプライズの誕生日祝いのプレゼントとして目の前に現れたのです!
さっそく最新型ポメラを開いてみました。
真っ白い紙のような大きな画面が出てきましたが、文字を打ち込むためのキーボードはまだ出てきません。
手元カバーの左側を開くとキーボードの左半分が見えるようになります。
そして、右半分のカバーを開けばかなり大きなキーボードが完成します。これなら指の太い外国人でもキーを打ち込むことができます。旧型のポメラではやはりキーボードの小ささがネックでしたが、この最新型ではそれも完全にクリアーされたわけです。これならいくらでも文章を打ち込むことができますね!
究極の商売道具を手に入れた保江邦夫