ミル金発祥の店「カニドン」が復活しました-星辰館〜保江邦夫オフィシャルサイト

ミル金発祥の店「カニドン」が復活しました

2018.06.26

 東京の「溶けないかき氷」の店について書いた中で、「ミル金(ミルク金時)」は岡山の発明だとか、その発祥の店は「カニドン」という名前で旧制高校時代から岡山市中心部の繁華街にあったけれども昨年の秋に頼りになる従兄とその娘、そして岡山の秘書と東京の秘書までも引き連れて延々と探しても見つからなかったことをお伝えしました。一時間以上歩き回ったあげく幻の「ミル金」を試食できなかったことがよほどくやしかったのでしょうか、その東京の美人秘書嬢が岡山の地方紙「山陽新聞」のネット記事の中に

『岡山「ミルク金時」発祥の店復活 2年ぶり、老舗喫茶「カニドン」』

というタイトルの速報を見つけてしまいました。

 すぐに僕に教えてくれたおかげで、僕もその記事を読むことができたのですが、その内容を写真とともに以下に引用しておきます。

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 かき氷の「ミルク金時」発祥の店として知られ、2016年に閉店した老舗喫茶店「カニドン」(岡山市北区表町)が、2年ぶりに同市の表町商店街に復活した。再開させたのは5代目店主となった水島浩美さん。2代目が父・正次さんで「父が作る『ミル金』のファンだった。味を守っていきたい」と話している。

【店を引き継いだ水島さんと、名物の「ミル金」。小豆は氷の底部分にある】

表町商店街に復活したカニドンの入り口

【昭和初期のカニドンの外観】

 「カニドン」は1924(大正13)年ごろに、水島さんの祖父・正さんが表町地区で創業。当時、店をたまり場にしていた地元の六高(第六高等学校)生が氷金時にコーヒー用のミルクを掛けて食べたのが「ミル金」の始まりという。

 中高生の頃、正次さんの下で皿洗いを手伝っていた水島さん。「コーヒーを入れたり、かき氷を作ったりする父の姿は格好良かった。常連客と世間話をしている和やかな光景も好きだった」と振り返る。

 閉店は4代目を継いでいた水島さんのいとこが体調を崩したため。やがて会員制交流サイト(SNS)などで広まると、残念がる声が方々から上がった。「何より私自身が、あの味が食べられなくなるのは困ると思った」と水島さん。店を引き継ぐ決意をし、メニュー作りのノウハウ習得など準備してきた。

 営業再開は今月1日。店は天満屋岡山店の南に位置する。旧店のはす向かいで、父親の代に営業していた場所だ。氷を削る機械は変わったが、削り方を工夫し、今も当時は珍しかったふわふわの氷を最大の特徴にしている。常連客からは早速「この味、この味」と“お墨付き”を得られたという。

 ミル金、宇治ミル金、チョコ金(いずれも500円)などがあるほか、ドリンク類も提供。水島さんは「懐かしがって足を運んでくれる人がいる。今の子どもたちにとっても『思い出の味』になっていってほしい」と話す。

 営業時間は午前9時~午後5時。火曜定休。

(2018年06月06日 18時48分 更新)

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 これを読んだ僕の心に火がつくことがわかっていたのか、僕がこの記事について知らされて最初に岡山に戻るとき、秘書嬢はいつになく僕を見透かしたかのような笑いを浮かべて新幹線を見送ってくれたのです。そして、案の定というか、高校生のときからすり込まれてしまっているカニドンの「ミル金」のことを思い出さない日のない僕は、まんまと秘書嬢の催眠術ならぬ策略に乗ってしまうのです。そう、岡山駅で新幹線を降りた僕は夢遊病者のように市内中心部の繁華街をさまよい、ついに、ついに、ついに、あの懐かしい「カニドン」を発見してしまいます!

 それは、まさに岡山県立岡山朝日高等学校の学生だったときの学校帰りに立ち寄っていたときと同じ場所にありました!

 店の入り口に出ていたメニューを見ると、コーヒーなどの飲み物類が何と300円とか400円で提供されていて、これなら今の高校生でも心配なく寄っていけるはずです。そして、肝心のかき氷の値段を見れば・・・え、え、えーーっ、「ミル金」などのかき氷が全品500円!!

 安い!!!

 僕は思わず唸ってしまいました。いや、かき氷が500円なら相場ではないかと訝しがる向きも少なくはないでしょうが、それはこのカニドンのかき氷の大きさを知らないからそんなことが言えるのです。

 ということで、さっそくカニドンの名物「ミル金」の雄姿をお目にかけることにいたしましょう。

 じゃじゃじゃ、じゃーーーーん!

 そう、これがカニドンで世界で最初に生まれた元祖「ミル金」の姿なのですぞ。まるで、スイスアルプスの名峰マッターホルンを彷彿とさせる白きたおやかな嶺に黄色いコーヒークリームをたっぷりと蓄えた氷壁は、何故か少々時間が経ってもまったく溶ける気配はありません。ということで、接写レンズで接近してシャッターを切ってみます。

 どうです、この雄大な姿はやはりマッターホルンそのものではないでしょうか。マッターホルンとの違いといえば、頂上に十字架が建てられていないということぐらいでしょう。

 さあ、まずは一口・・・というか、どんどんと口に入れてみましょう。

 如何ですか? ご覧になっておわかりのとおり、氷が溶けてジャブジャブになると思いきや、まったく溶けないのです! さらに食べ進んでいきます。

 どうです、ここまできてもまだまだまったく溶けていないのです! ということで・・・もっと食べていくと・・・。

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 ほら、ガラス容器の底が見えてくる頃には、他の店のかき氷ならビショビショに溶けた氷が底に溜まっているはずですが、氷は溶けないままで残っているのです。

 ついにここまで食べてしまった段階でも、溶けた氷は皆無!

 さあ、もうほんの一口か二口分しか残ってはいませんが、見て下さい。まったく溶けていないのがおわかりでしょう。いやー、これもまた高校のときとまったく同じです。

 高校生だったときの僕はある日のこと、カニドンの親父さんに聞いてみたことがあります。どうしてカニドンのかき氷は他の店のかき氷のように途中で溶けてしまうことがないのか、と。すると、親父さんは笑いながら答えてくれました。他の店では氷の塊を削る道具の刃の部分を砥石で研いだりはしないけれど、俺の店では毎朝真剣に研いでるのだ、と。

 いやー、まさに職人技の妙ではありませんか。

 今回復活した職人技のおかげで、これからもカニドンの溶けない「ミル金」を楽しむことができるようです。むろん、溶けないという点だけではなく、その美味しい味も昔のまま。とことん満たされた気持ちの僕が水島さんという店を引き継いだ女性に礼を言って席を立ち出口に向かうとき、商店街のアーケード通りの風景が額縁のように切り取られて光っていたのを見たとき、思わず高校生の時代にタイムスリップしそうでした。

 そんなノスタルジックな思いに浸りながらカニドンを出てみると、そこは紛れもない現代の岡山市中心部の繁華街で、いささかシャッターも降りたままの商店が目立つようになっています。

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 カニドンの復活が引き金となって、再びこのアーケード商店街にも活気が戻ってくるとうれしいナー。

などと急に岡山の人間に戻った保江邦夫

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