高速道路の横断歩道-星辰館〜保江邦夫オフィシャルサイト

高速道路の横断歩道

2018.03.28

 港区白金の一室に住み始めてそろそろ丸一年になろうとしています。その間は主に地下鉄を使って都内を移動していましたので自分の部屋から最寄りの白金高輪駅に向かう白金町内しか歩いたことはありませんでした。それがこの2月からミニ・クーパーを地下駐車場に置かせていただいている白金隣接の南麻布の高層オフィスビルまで3分ほど歩く日が続いていくうち、ふと南麻布の街を散歩する気になってきました。

 首都高の高架の下を天現寺橋までのんびり歩いていたとき、ふと歩行者横断用の信号に出くわしました。まあ、どこにでもあるような横断歩道でしたが、何となく雰囲気が違うので周囲をキョロキョロと見渡してみたところ・・・。

 なんとこれは、首都高の高速道路の天現寺インター出口の自動車専用道路を歩行者が横切るためにある信号付横断歩道だったのです。つまり目の前の道路は一般道ではなく、まだ首都高の一部の自動車専用道路ということです。しかしどう見ても普通に街中にある日常的な横断歩道の風景ですから、自転車や原付でついふらりと進入していく人も少なくないのでは? そんなことも時々はあるのでしょうか、大きく目立つように「歩行者・自転車立ち入り禁止!!」という警告看板が取り付けられていました。さらには、「横断歩道以外は自動車専用道路です、入らないで下さい」とも念押しされていたのです。

 いやー、日常の生活圏内にこんな非日常な看板があるとは、さすが各国大使館の多い南麻布です。

 この天現寺インターを通り過ぎてさらに歩いていくと都内中心部によく見られる小さなガソリンスタンドが一件あったのですが、ここでも何となく違和感を覚えたので少し立ち止まってしばらくの間眺めていました。すると、その違和感の原因が見つかったのですが、それは普通ガソリンスタンドには掲げられるはずもない「TAX FREE(免税)」という大きな看板だったのです。

 その意味はすぐにわかりました。僕がその昔住んでいたスイスのジュネーブには国連欧州本部があったため、各国の国連大使やその部下のために「CD」マークが入った外交特権のナンバープレートがついた自動車が多数走っていたのを思い出したのです。そして、それらの車がジュネーブ市内のガソリンスタンドでガソリンを入れるときには、外交特権によって免税となるのです。南麻布には各国の大使館が多いことからすれば、やはりここでも「外」というマークが入った外交特権のナンバープレートをつけた車がやってきたときには免税措置がとられるのでしょう。

 それにしても、やはり南麻布。さながら「犬も歩けば棒に当たる」ごとく、僕が散歩してもすぐにどこかの国の大使館が目に入ってくるのですから。僕の部屋の近所だけでも、イラン大使館、フランス大使館、イタリア大使館に中国大使館と目白押しです。

 そんなことを考えながらふと明治通りの向かいを見てみると、そこには明らかに拳銃を腰に下げた制服の警備員がゲートに立つ、星条旗が掲げられた入り口がありました。

 まてよ、確かここは何年か前に立ち寄ったことがあった米軍関係者が都心で宿泊するための治外法権が適用されたホテルのチェックポイント・・・。そうそう、あのときは元CIAエージェントでデンバー空港の地下に秘密裏に造られた宇宙人とアメリカ連邦政府の共同研究施設で働いていたというアメリカ人とこのホテルの会議室で会い、様々な機密資料を見せてもらったのでした。ホテルの中は完全にアメリカ国内扱いで、廊下に置かれた自動販売機もアメリカ本土のホテルに置かれるものと同じ、当然ながらホテル内の通貨はアメリカドルでした。ホテル内の売店は、さながら東京のど真ん中にある免税店といった雰囲気で、知り合いのアメリカ軍関係者に呼んでもらったのか店に入ってきた日本人が買い物に励んでいたのが印象的でした。

 こうして外から眺めてみると「THE NEW SANNO」と大きく書かれてあったので、僕が呼び出された「山王ホテル」に間違いありません。あれ以来もう二度と山王ホテルに来ることはないだろうと思っていましたが、まさか僕が去年の4月から住んでいる部屋のすぐ近くにあったとは。これまた新鮮な驚きです。

 また、この免税ガソリンスタンドの並びには「麻布美術館」と書かれた小さなビルがあり、壁面やショーウィンドウには何やらヨーロッパの巨匠達による名画の大小の複製が飾られています。見ると、有名作品の複製画専門の画商のようで、要するに贋作専門店といったところでしょうか。こういう特殊なお店がやっていけるのは、やはり南麻布という土地柄なのでしょう。ふむふむ、とうなりながら歩いていくうちに天現寺橋までやってきました。横断陸橋を上がりきったところに、警察官のようなガードマンのような制服の上に防寒服をまとった男性が周囲を監視しています。陸橋の上から眺めてみると、そこには何やら品のよいレンガ造りの建物が木々に隠れています。

 聞けば、田舎育ちの僕でさえ昔から名前だけは知っていた、あの慶應義塾の幼稚舎とのこと!

 いやー、そんなものまでもがご近所にあったとは・・・、恐るべし白金界隈。

 

 保江邦夫

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