今日は横浜の整体学校ナチュラルハンドアカデミーHOLOSでの今年最初の宇宙学講座がありました。予報どおりに昼過ぎから小雪が舞う中を多くの皆さんが集まって下さったのですが、午後4時に講義を終えたときにはかなりの雪になっていました。ご帰宅時にトラブルに見舞われるかもしれないにもかかわらず熱心に聴講して下さった皆さんに別れを告げ、横浜市営地下鉄の最寄り駅まで足を滑らせながら移動しました。その後東急電鉄と地下鉄を乗り継いでなんとか白金にたどり着いたときには道路にもかなりの積雪がありましたが、横浜とは違ってサクサクした粉雪だったために歩くのには問題ありませんでした。
しばらく歩いたところで黒塗りの大型ベンツが脇道の積雪に後輪をスリップさせて立ち往生をしていました。運転席から困惑顔で降りてきた初老の紳士が見えたとき、ふと「押しましょうか?」という台詞が口を衝いて出ていました。「お願いできますか、すみません」という返事とともに運転席に戻った紳士がアクセルを踏み、僕は大型のベンツを後ろから押したのですが、幾らやっても後輪が空回りするだけでどうにもなりません。
持っていた傘をつぶして後輪の前に溜まっていた雪をどけて再度トライしたのですが、わずかに前に進むだけでどうにもならない状況に変わりはありません。ところが二人して途方に暮れていたとき、通りかかった若い女性が笑顔で「お手伝いします」と言うが早いか大型ベンツの後ろに立ってくれました。しかし僕とその女性の二人で押してみても、大型ベンツはやはり後輪を空回りさせるだけで、道路の積雪を広範囲にわたって取り除くしか方法がないということがわかり、紳士も僕も天を仰ぎました。ところが女性はといえば、まったくめげた風もなく、再び明るい声で言ったのです。「私はそこの病院で働いている看護師なんです。病院から除雪機を借りてきます!」
紳士も(なぜか僕も)頭を下げながら「ありがとうございます」を連発する中、その看護師さんはテキパキと大型ベンツの前の雪を広範囲に取り除いてくれました。再び僕と二人で大型ベンツの後ろを押すのですが、もう一息というところでなかなか前には進んでくれません。そんなとき、道路の反対側を歩いていた別の若い女性が「お手伝いします」と言って下さり、三人で押してみたところ見事に動き始めて雪が少ない幹線道路に無事に入っていくことができたのです。そこでいったん車を止めて車外に出て何度も我々に頭を下げて下さった老紳士に、手を振りながらそれぞれ笑顔を残して別れていった三人のうちの一人だったことを、雪が降る度にほのぼのと思い出すことができる幸運に恵まれた日になった・・・のではないかな。
保江 邦夫