夏の神旅2-星辰館〜保江邦夫オフィシャルサイト

夏の神旅2

2019.11.17

 夏の神旅の本命といえば、やはり京都ですよね。先回の最後に登場した細川ガラシャが住んだのも、日本海に面する京都の港町・宮津でした。そして、京都の日本海側といえば・・・そう天橋立(あまのはしだて)です。天橋立の周囲には「天橋立神社」を始め何社もの重要な御社が建立されています。元伊勢で有名な籠神社(このじんじゃ)、そして籠神社の奥宮にあたる真名井神社(まないじんじゃ)が有名です。

 というわけで、カトリック宮津教会を後にした僕は車で20分もかからないはずの天橋立に向かったのですが・・・運悪く夏休み期間中の連休のど真ん中ということで、道路は観光客と海水浴客の車で大渋滞。遅々として進まない状況に音を上げた僕は、ふと目に留まった駐車場に車を突っ込み、海岸線を少しだけ歩いたところにあった船着き場で交渉した結果、観光用の高速モーターボートに乗せてもらえることになりました。

 海の上は渋滞とは無縁の世界、このように爽快な波しぶきを上げながら一直線に天橋立神社を目指します。とはいっても、海の上だからといって幾らでもぶっ飛ばしてよいというわけではありません・・・でした。

 そう、丘の上には警察交通機動隊所属のパトカー、そして海の上には、な、な、なんと、海上保安庁所属の高速パトロール艇が警邏中だったのです。むろん、観光用モーターボートの船長さんは無謀な操縦はしませんから高速パトロール艇が向かったのは海水浴客の近くで危険な走り方が目立っていた水上バイクのほうでした。

 ということで、海上保安庁に捕まることもなく目的地である天橋立神社にあっという間に到着!! といっても、鳥居の前には船着き場がないため、上陸は不可とのことでした。

 残念!!!

 とまあ、僕の人生なんて常にこんなもんです・・・、と開き直った僕は海上から天橋立神社に向かって祝詞を奏上させていただきました。

 その後船着き場に向かって観光用の高速モーターボートが通過したのは、ちょうど大型船を通過させるために回転させた直後の天橋立をつなぐ可動橋の真下です。

 なかなか見ることのできない光景ですね・・・。

 ともかく海上から天橋立神社にお詣りすることができた僕は、陸に上がって再び車のハンドルを握り、そのまま京都縦貫道を走って京都市内中心部へと移動しました。最初に向かったのは御所の北にある「上御霊神社(かみごりょうじんじゃ)」です。

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 十六菊花紋が金色に輝く鳥居からもわかるように、この上御霊神社は皇室との繋がりが強い神社です。

 拝殿もこのようにとても気品のある立派なものです。その拝殿の横に廻ってみると・・・。

 割れた大きなツボに出入りして遊ぶ童子の像が建てられていました。これは「清明心の像」と呼ばれ、中国宋代の学者司馬温公の故事に因んで純真な子どもの心を表現しているとのこと。

 そして、この像の横を通っていくと朱色の鳥居が何列も並んだ奥に稲荷神社の御社が輝いています。

 この上御霊神社にお詣りにきた理由はというと、僕との霊的なつながりが深い吉備真備を御祭神とする珍しい神社だからでした。かねがね一度はお詣りしたいと思っていたのですがなかなかタイミングが合わず、こうして天橋立神社からの帰りに初めて寄らせていただくことができました。

 吉備真備公を御祭神とすることとは直接には関係しないのでしょうが、ご覧のようにこの上御霊神社は御輿を収めた倉にもこのように大きな十六菊花紋が金色に輝いていました。

 それと対照的というか、上御霊神社から歩いて烏丸通りへと出るすぐ手前に見つけたのはとても素朴な造りで小さな「猿田彦大神宮」でした。

 東京の溜池から六本木に歩いていったところにも小さな猿田彦神社がひっそりとたたずんでいますが、この京都の猿田彦大神宮はその名前とは裏腹に本当に小さくて、気づかずに前を通り過ぎてしまう人が多いのではないでしょうか。しかし、その場所はとても清明な雰囲気に満ちていました。

 猿田彦大神宮にもお詣りした僕は、ふと思い立ち愛車を祇園の知恩院へと走らせることに・・・。

 ここはそう、日本人で初めてノーベル賞受賞に輝いた理論物理学者・湯川秀樹先生のお墓があるところです。湯川先生の末席の末席の門人である僕はこれまでも墓参に何度か訪れてはいましたが、このタイミングでなぜか寄ってみたくなったのです。すると、いつもは何も置かれていないはずの黒い碑石の上に、どういうわけか古い五円玉を一つ見つけてしまいました。

 その刹那、きっとこれは京都の神旅に出る前に麻布の茶坊主さんを通して湯川秀樹先生の貴重な激励のお言葉を頂戴できた「御縁」を忘れるなという、湯川先生からの念押しに違いないと理解したのです。ただ、だからといってその五円玉を勝手に持っていったのでは泥棒ですので、ちょうど自分の財布の中に入っていた別の五円玉を取り出して交換してもらうことに・・・。

 代わりの新しい五円玉を碑石の左上に置いた僕は、碑石の右上に置かれていた五円玉を湯川秀樹先生から頂戴した「御縁」として御守りにさせてもらったのです。

 こうして無事に湯川先生からの「御縁」を頂戴できた僕が時計を見ると、午後の3時を回ったところです。こんな時間に空いている店はというと、そう、僕が京都に来る度に顔を出している小さな小さなフレンチの店が車で5分のところにあります。ここからは直会ということにして、遅いデジュネというか、早すぎるディネーの後に不思議なカップでコーヒーをいただきました。以前にも写真ではご紹介しましたが、今回はそのからくりもご説明いたしましょう。

 このコーヒーカップは金属製で、表面がピカピカのメッキで鏡面仕上げになって周囲のものがすべてカップの凸面に歪んで映し出されるようになっているのです。そして、ソーサーの上には左右反転した「Thank You」という文字が逆向きに丸いお皿の曲率に合わせて曲がって描かれているところが、ミソ。

 そう、この歪んだ反転文字がコーヒーカップの凸面に反射して見事にまっすぐな「Thank You」と見えているのです! いやー、脱帽ですね、物理学の不思議な常識を逆に使ったお遊び・・・、さすが僕が足繁く通うお店だけのことはありますね。

お墓参りに対する湯川先生からのお言葉が浮かんで見えたと信じる保江邦夫

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