ドックヤード-星辰館〜保江邦夫オフィシャルサイト

ドックヤード

2019.02.28

 美人校長先生に招かれての月に1回の「宇宙学講座」も既に30回を超えました。毎回近所の白金高輪駅から地下鉄乗り入れの東急目黒線で武蔵小杉まで行き、同じホームで今度はみなとみらい線乗り入れの東急東横線に乗り換えます。ほんの数分間待っているといつものように乗り継ぎの電車が到着するのですが、この日は初めて目にするノスタルジックな塗装が施された先頭車両が目を引きました。

 よく見ると「東横線開業90周年」と記されたエンブレムが光っています。なるほど、東横線が開業90周年を迎えるにあたり開業当初のレトロな電車を模した塗装になっていたわけです。車内は現代のままではありましたが、何となく昔に戻った雰囲気で横浜駅を通り過ぎ、みなとみらい駅で下車。

 駅から地上に出てみたところで迎えてくれたのは、ハリウッドのSF映画『コンタクト』に出てきたスターゲートを彷彿させるような巨大な金属のオブジェが空に向かって突き出た構造物。

 螺旋やメビウスの帯が幾重にもつなげられた不可思議な印象を受けるその場所にしばらく釘付けになっていたのですが、見上げたままの視線をふと左に向けると横浜ランドマークタワーの威容が目に止まります。

 圧倒されながら視線をそのまま下げていくと、ランドマークタワーの前に何やら古代ローマの円形競技場コロッセオを連想させるこれまた不可思議な構造物が、今度は地中に向かって潜っています。

 見れば底の部分に降りていく階段もあるようでしたので、気の向くままに最下部まで行ってみました。するとクリスマス前の時節柄なのか、人が潜れるような大きさの金属製のハートマークが一つ立てられていました。ひょっとして空に突き出ていた巨大なスターゲートと対になった小さなスターゲートなのかと、見ていて楽しくなってきます。

 無機的で少しだけ古代エジプトの神殿を想い描かせるかのような背景とも相まって、このハートマークの中を通過していく先は時空をはるかに超えた他の銀河系宇宙の星々ではないかとまで想像タクマにしてくれます。で、ふと頭上を見上げると・・・そこに現れるのは巨大なUFOならぬ、こちらを押しつぶさんばかりのランドマークタワーの巨体でした。

 そう、エジプトにあるギザの大ピラミッドの地下に隠されているスターゲートと同じく、この不思議なハートマークもまたわざわざ現代のピラミッドであるランドマークタワーの地下に設置されていたことになるのです。うーむ、これもまた面白い!

 で、再び階段を上って地上部分に出てみたところで見つけたのは、これまた古い金属製の出っ張り。

 天辺には、なにやら「保江」の「保」を思わせるような文字が彫られていて、俄然興味をそそられます。幸いにも近くに観光用の解説を彫った案内板があったため、この古い窪地やその周囲の出っ張りが何なのかがわかりました。実は、ここはその昔に横浜港で船の修理をするための「ドックヤード」だった場所で、その後港湾整備で埋め立てられるときにドックヤードの造作を遺して記念館的に保存することにしたものだそうです。

 で、この出っ張りはドックヤードに係留する船の舫いロープを巻き付けるブイだったとか。なるほど、「保」の字は「保管」とか「保留」の意味だったのでしょうか・・・。

 そしてこれには僕も感激したのですが、その日の「宇宙学講座」の会場は何とこのドックヤードの中だったのです!! 当然ながら僕のテンションも上がり、いつもよりもずっと張り切った口調で(いつもながらの)口から出任せ的な内容を機関銃のようにまくし立てました。ほどよい疲れとともに会場を出たとき、辺りは夕暮れの黄昏に包まれ始めていました。

 見上げたランドマークタワーもすっかり灰色にくすんでいます。その地下部分にある「ドックヤード」の底を覗いてみると・・・。

 そう、やはりそこがスターゲートだったと言わんばかりにオレンジ色に光るハートマークの背後に広がるのは、青白く輝く別の銀河系宇宙・・・。実に夢が広がる電飾が施されていたのです。

 ドックヤードの反対側に目をやると、まあ世俗的な方々には受け入れられるのでしょうが「ハードロックカフェ」の定番の看板が光っていて、せっかくのSF気分も台無しです・・・。

 そのすぐ後ろにはSF映画『コンタクト』に登場したスターゲートのような巨大なアートがあるのですから、せめて『バックトゥーザフューチャー』に登場したエレキギターに似せた看板にしてほしかったのは僕だけの想いでしょうか? 興ざめな看板に背を向けたとき、道路を挟んだ向かいに見えたのは何本ものマストが美しい大型帆船の白い船体でした。

 近づいてみると、これまで年に1回の練習航海に使われていた日本で唯一の外洋帆船「日本丸」でしたが、これからはそんな航海にも使われる予定がなくなったために横浜港に係留という形ではなく、「ドックヤード」と同じく陸地に固定されてしまう運命にあるとか。大型帆船の操船という大航海時代からの人間の叡智もまた、この肥満した現代日本では消え去ってしまうことになるのでしょうか。

肥満溢れる現実よりもロマン溢れる空想の世界が好きな保江邦夫

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